空気と生活

ダニが空気を汚す、なぜ? 

2023/01/06(金) すべて

 

この場所の空気はきれいではない、と感じられるとき。私たちは何を指標にしているのでしょう。においの有無、それとも気温でしょうか。湿度の多寡、あるいは鼻がムズムズする感じがあるかないか、などかもしれません。 

 

こういった体感というのはアナログなもので、根拠となる数値が示せるわけもないものです。でも多くの人は、一度は「なんとなく空気が汚れている気がする」と感じた経験を持っているのでは。理由はわからないけど、急に咽喉がいがらっぽくなる。クシャミが出てしまい止まらない。あるいは、なんとなく気分がムカムカしてくる。そう感じながら、しかし何の汚れが目に見えるわけでもないのですが。

 

よくある「空気のような人」などという言い方からは「取るに足らない」ようすが感じ取れます。でも実際のところ私たちにとって空気の良し悪しというのは、ややもすれば飲み物や食べ物より、直ちに身体への影響を及ぼしかねない深刻なもの。命すら容易に左右する要素です。

 

なにぶん1日に吸う空気の量は1〜2万リットルと膨大で、かつ生きている限り呼吸が止まることはありません。常に待ったなしで、新鮮清潔かつ健康的な空気を私たちは必要としているのです。

 

 

ところで、この「部屋の空気が汚れる」というときの、「汚れ」が何を指しているか、ご存知ですか?

 

思い当りやすいところで煤煙(排気ガス)や花粉や黄砂などといった、外から侵入してくる微粒子の類はいかにも汚そうです。それから喫煙やお線香などによる煙。風呂場などに生えたカビの胞子。家具や家電や住宅設備、防虫剤などから揮発するガス。さらには私たち自身が呼吸により発する二酸化炭素も、部屋の空気を汚す主原因になります。

 

 また近年では減ってはいますが、冬なら燃焼系の暖房器具による一酸化炭素も空気の「汚れ」の代表格でしょう。

 

しかしそのほかにも私たちの寝ている寝具や、身につけている衣類までもが「空気を汚している」元になる可能性があるという認識は、あまり一般的ではないかもしれません。

 

確認してみてください。毎日寝ている「敷き布団」や「ベッドマットレス」や、フローリング床に敷いたラグなどを、少し叩くと、細かな「白い粉」が布の上にうっすら浮き上がり、ざらざら触れませんか。もしそうなら、赤信号。

 

それは、あのいわゆる「ダニ」の死骸やフンが、乾いて細くなった微粒子かも知れません。

 

 

一年のうち半分近い期間が高温多湿となる自然環境。さらに室内では夏は冷房、冬は暖房といった空調を使い年間通して20度近い室内環境。そんな条件のもとに暮らす私たちは、残念ながら、どんなに努力しても住まいから「ダニ」という虫の存在をゼロにすることはできません。

 

ただ、その数を野放図に増やし続けるわけにもいきません。住まいの床を汚す、ありふれた「ホコリ」1グラムには数千ものダニが含まれると言われ、乾燥、粉末化したフンや死骸のかけらはそんなホコリと一緒に、私たちの活動と共に部屋の空気中に舞い上がって、それを私たちは呼吸してしまうからです。

 

それらは「アレルゲン」として、喘息や鼻炎、皮膚炎などの健康上の異状をしばしばもたらします。「ダニを吸わない」ためにできることは「ダニを増やさない」こと。つまるところはダニの快適環境をもたらす過剰な湿気を籠らせたままに、寝具や部屋を使用し続けないこと。定期的な換気と掃除を怠らないこと。

 

そんなあたりまえの暮らしや家事がすなわち、「空気を汚さない」ための、一丁目一番地となることを、ぜひ頭の片隅に留めておいてください。

 


藤原千秋(住生活ジャーナリスト)
https://allabout.co.jp/gm/gp/31/

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